エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
家柄もよくて誠実な朝比奈さんは結婚相手として申し分ないはずなのに、どうしても前向きな気持ちになれない。
優柔不断な自分が情けなくてうつむくと、私を気遣う芽衣の言葉が耳に届いた。
「美桜の気持ちわかるよ。だって私たちまだ二十三だよ。四月に就職してようやく仕事が楽しくなってきたところだもん。相手が誰であろうと今は結婚なんて考えられないよね」
私の不安な思いを理解してくれる言葉に胸が熱くなる。
視界がユラユラと揺れ出して初めて、結婚を急かされる日々にストレスを感じていたのだと気づく。
「朝比奈さんには、結婚できないって言ったの?」
「縁談の返事は取りあえず保留にしてもらっているけど、納得しているようには見えなかった」
目尻に滲む涙を指先で拭って芽衣の質問に答える。
「わかった。だったら私がハッキリ言ってあげる。どんなときでも私は美桜の味方だよ」
「ありがとう」
意気込む芽衣を心強く思っていると、頭上から聞き覚えのある声が降り落ちてきた。
「待たせたね」
「朝比奈さん!」
話に夢中で、彼がお店に到着していたのにちっとも気づかなかった。
ソファから立ち上がって、朝比奈さんに芽衣を紹介して挨拶を済ませる。