エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
「早速ですが、朝比奈さん。美桜はあなたと結婚できません」
「ちょっと、芽衣!」
私の隣に腰を下ろした朝比奈さんに向かって、芽衣がいきなり本題を切り出す。その強い口調に驚き、慌てて声をかけたものの芽衣は少しも動じない。
「親友を紹介してくれるというから急いで駆けつけたが、どうやら俺は歓迎されていないようだな」
「ごめんなさい」
頼りない私に代わって毅然とした態度を取っただけで、芽衣はなにも悪くない。
ソファにもたれかかって苦笑いする朝比奈さんに頭を下げる。
「いや。そういうことなら、納得するまでじっくり話し合おう」
朝比奈さんがスタッフを呼んでアイスコーヒーをオーダーする。
急に呼び出されたうえに初めて会った芽衣にきつくあたられたら、平静さを失ってもおかしくない。けれど、朝比奈さんの様子は普段となにも変わらない。
冷静に話を進めようとする彼に感心していると、芽衣がコホンと咳払いをする。
「単刀直入にお聞きします。朝比奈さんは美桜のどこに惹かれたんですか?」
「素直で優しくて、謙虚なところだ。あとはかわいい笑顔だな」
どんなことにも誠実に対応するのは朝比奈さんの長所なのかもしれないけれど、恥ずかしい質問に真顔で答えるのはやめてほしい。