エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
「あのっ!」
これ以上、お世辞を聞くのはいたたまれなくて、ふたりの会話を止めるために声をあげる。しかし、芽衣の言葉にかき消されてしまう。
「わかります! 美桜は黙っていてもかわいいけど、笑うともっとかわいいですよね」
「ああ。そうだな」
朝比奈さんと芽衣が同時にクスクスと笑い出す。
ほんの少し前まで朝比奈さんに敵意をむき出しにしていたのに、すっかり意気投合している芽衣の様子に驚いていると、オーダーしていたアイスコーヒーが運ばれて来た。
朝比奈さんがミルクもガムシロップも入れずにひと口味わい、体の向きを変えて私を見据える。
「俺は美桜さんを泣かせたりしない。だから結婚を前提として付き合ってほしい」
朝比奈さんは私が失恋して涙に暮れる姿を目のあたりにしている。涼ちゃんの名前こそ出さないけれど、あのときと同じような悲しい思いはさせないと遠回しに言っているのだとすぐに気づいた。
私の過去を受け入れたうえで気遣いを見せてくれる彼は、包容力があって信頼できる人だと思う。でも、好きでもない相手と付き合うことはできない。
朝比奈さんには悪いけれど、今この場で縁談を断ろうと決意したとき、あろうことか私よりも芽衣が先に口を開いた。