エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
「はい。喜んで」
当事者を差し置いて勝手に返事をするなんて信じられない。
「芽衣!」
「だって真面目な朝比奈さんになら、美桜を任せられると思ったんだもん」
たしなめるように声をあげる私に向かって、芽衣が唇を尖らせて反論する。
『どんなときでも私は美桜の味方だよ』と言ってくれたのに、舌の根も乾かない内に心変わりするなんて裏切られた気分だ。
気まぐれな芽衣にあきれていると、朝比奈さんがすかさず口を挟んでくる。
「返事は三カ月待つと約束したのに急かしてすまない。返事はもちろん今じゃなくていい」
「はい」
縁談を断ったら、朝比奈さんを気に入った芽衣が騒ぎ出すに決まっている。ここは彼の厚意に甘えて、返事はふたりだけのときにしようと思い直した。
「それじゃあ、悪いが俺はこれで帰らせてもらうよ。芽衣さん、今度はゆっくり食事でもしましょう」
「はい。ぜひ」
朝比奈さんが芽衣にニコリと微笑んでソファから立ち上がる。
この前会ったときは縁談の返事をしつこく尋ねてきたのに、今日は早々と話を切り上げて帰ろうとする不自然な様子に違和感を覚える。