エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
「そのワンピース、この前と一緒だな」
「はい」
彼の言う通り、今日は私たちが初めて会った日と同じ、ベビーピンク色のワンピースを着ている。
記憶力のよさに感心していると、彼がニコリと微笑む。
「ワンピースもその髪型もよく似合っている」
今日は朝一番でサロンに行って、肩まで伸びた髪を緩く編み込んでもらった。
お世辞だとわかっていても、褒められるのはやっぱりうれしい。
「ありがとうございます」
照れくささを感じながらお礼を伝えると、タクシーが赤坂のコンサートホールの前に到着した。
朝比奈さんの手を借りて後部座席から降りる。けれど、目と鼻の先にあるホールに向かって歩き出しても、彼は一向に私の手を離そうとしない。
「あ、あの。手……」
「そんな踵の高い靴で歩くのは危ないだろ」
付き合ってもいないのに手を繋ぐのはおかしいと思って声をかけても、朝比奈さんはちっとも動じない。
たしかに今日は結婚式という華やかな場に会わせて、普段は履かない八センチヒールのパンプをチョイスしてきた。