エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
普段は寝つきがいいのに今日に限って眠れないなんて、まるで遠足を楽しみにしている小学生みたいで恥ずかしい。
縁談の返事を保留にしている相手とのドライブを待ち遠しいと思うのは、朝比奈さんに惹かれている証拠なのかもしれない。
暗がりのなか、そんな考えがふと頭に浮かんだとき、猛烈な吐き気が込み上げてきた。
口に手をあててベッドから起き上がり、慌てて部屋を飛び出してトイレに駆け込む。
風邪をひいても喉に痛みを感じるくらいで済むし、今まで大きな怪我をしたこともない。
健康には自信があるのに、急に気持ちが悪くなるなんておかしいと考えて、胃から逆流してくる不快なものをすべて吐き出した。
フラフラした足取りで部屋に戻り、嘔吐してしまった原因を考える。
もしかしたら、夕食で出たアジのお刺身のせいかもしれない。そういえば、父親と母親は大丈夫なのだろうか。
同じ夕食をとった両親の様子が気になったとき、再び強い吐き気に襲われる。
「うっ」
パタパタと足音を立てて廊下を走り、トイレに入ってうずくまる。けれど胃の中のものをすべて吐き出しため、もう胃液しか出てこない。
ケホケホとむせ返りながら、いつ終わるかわからない苦しみにひとり耐えた。