エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
「美桜? いつまで寝ているの? もう八時よ」
朝になっても一階に姿を見せない私を起しに来た母親の声で、ハッと目が覚める。
明け方になって吐き気は治まったけれど、まだ胃がムカムカしているし体がだるくて起き上がれない。
「昨日のアジにあたったみたい。気持ち悪い……」
「えっ? 本当に?」
ベッドに横たわったままでいる私の額を、母親が心配げに触れる。
「熱はないわね。スポーツドリンクを持ってくるから水分だけはきちんととりなさいね」
「うん。ありがとう」
母親が部屋から忙しなく出て行く。
『アジにあたったみたい』という言葉を聞いて驚いたということは、具合が悪くなったのはどうやら私だけのようだ。
もしかしたら、アジが嘔吐の原因ではないのかもしれないという思いが脳裏をかすめる。けれど、寝不足と胃の不快感のせいでアジのほかになにを食べたのかすぐには思い出せない。
こんな状態ではドライブはとても無理だ。朝比奈さんには悪いけれど、今日はキャンセルさせてもらおう。