エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

「今日はごめんなさい」

「いや、ドライブはまた今度行けばいいから気にするな。それよりも顔色が悪いな。大丈夫か？」

朝比奈さんが下を向く私の顔を覗き込んでくる。

私を心配する優しい声を聞いたら、ひとりで悩み苦しんでいた気持ちが一気に緩んで涙が込み上げてきてしまった。

「朝比奈さん。私……どうしたらいいのか……わからなくて……」

泣いても困らせるだけだと頭では理解しているのに、瞳から涙がこぼれ落ちるのを止められない。

「どうした？　また具合が悪くなったか？」

「違……うの。私……」

泣きながらただ首を左右に振るしかできない私の肩に、彼の大きな手がそっと触れる。

「大丈夫だ。俺がそばにいる。なにも不安になることはない」

事情を知らないのに、私を安心させるために温かい言葉をかけてくれる彼の優しさが心にしみ入る。

これは私だけの問題ではない。すべてを打ち明けて、この先どうしたらいいのかふたりできちんと話し合わなければいけない。

決意を胸に、指先で涙を拭って顔を上げる。

「私……妊娠したかもしれません」

「えっ？」

私の口から『妊娠』という言葉が飛び出るとは思ってもみなかったのだろう。私を見つめる彼の黒目が大きく左右に揺れる。