エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
「病院には行ったのか?」
「まだです」
「そうか。それなら今すぐ行こう」
朝比奈さんに手首を掴まれ、羽織っていたカーディガンが肩からハラリと落ちる。
私の体調がよくないと知っているのに、強引に連れ出そうとするなんて聡明な彼らしくない。
「ちょ、ちょっと待ってください。今病院に行ってもお休みです」
「ああ、そうか。今日は日曜日だったな。それならドラッグストアで検査薬を買ってくる」
朝比奈さんの手が、私の手首からスッと離れる。
うじうじ悩んで泣いていた私と違い、すぐに事実をたしかめようとする行動力はさすがだと思うけれど、今は感心している場合じゃない。
「待って……あっ!」
部屋を出て行こうとする彼を呼び止めるためにベッドから立ち上がったけれど、脚に力が入らずに膝から崩れ落ちてしまう。
「大丈夫か?」
脱力感はあるけれど、どこも痛くはない。
「はい。大丈夫です」
「妊娠と聞いて動揺してしまった。悪かった」
「いえ」
普段は冷静な彼がうろたえるのは珍しいと思いながら、手を借りてベッドに戻る。
予期せぬ事態に戸惑っているのはふたりとも同じ。だからこそ、私たちは冷静に話し合わなければいけない。