エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
「美桜さんも生まれてくる子供も幸せにする。だから俺と結婚してほしい」
子供が健やかに育つには両親の愛情が不可欠で、朝比奈さんと一緒に大切な命を育んでいきたいという思いが胸の中で大きく膨らむ。
母親の自覚が芽生えた今、結婚を拒む理由などなくて、すぐに「はい」とプロポーズを受け入れた。
「うれしいよ。俺も触ってもいいか?」
まだ膨らんでもいないお腹に手をあてるのは少しせっかちな気がするけれど、声を弾ませて聞かれたら断れない。
「ど、どうぞ」
「ありがとう」
大きな手が、腹部にゆっくりと伸びてくる。その手つきがぎこちなく感じるのは、私の気のせいなんかじゃない。
常に堂々としている彼が、たどたどしくお腹に触れる様子はとても新鮮で心が和む。
「女の子なら美桜さんみたいな、優しくてかわいい子に育つだろうな」
「男の子だったら、朝比奈さんに似た誠実でカッコいい子に育ちますよ。きっと」
子供の将来の話をしているつもりが、実はお互いを褒め合っているだけだと気づく。
「なんだか照れるな」
「そうですね」
朝比奈さんがお腹から手を離し、うつむきがちに髪を掻き上げる。
初めての経験に、私も彼も気持ちが少し浮ついているようだ。