エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
「ああ、そうだ。結婚すると決まったからには、これからは名前で呼び合おう」
ふたりの間に流れる気まずい空気を取り払うように、朝比奈さんが口を開く。
思いがけない提案に戸惑ったものの、近い将来、姓が変わるとわかっているのに、いつまでも彼のことを『朝比奈さん』と呼んでいてはたしかに不自然だと納得する。
「美桜。三人で幸せになろう」
呼び捨てにされた瞬間、自分は彼の特別な存在なのだという温かい気持ちが胸いっぱいに広がる。
「はい。た、龍臣さん」
同じ喜びを感じてほしくて、気恥ずかしい思いを堪えて返事をすると、彼がクスクスと笑い出した。
「初々しくていいな」
彼が満足げに微笑み、私の顎先に触れる。
顔がゆっくりと上向くなか、キスの予感に瞼を閉じるとふたりの唇が静かに重なる。
これからお互いの両親や職場への報告、式の日取りなど決めなければならないことがたくさんあるし、今はまだ目立たないお腹も日を追うごとに大きくなっていくだろう。
目まぐるしい毎日に不安がないと言ったら嘘になる。けれど、頼りがいのある彼と一緒ならきっと乗り越えられる。
彼の唇の温もりを感じながら、幸せな気分に酔いしれた。