エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
軽井沢駅からほど近い、アウトレットで有名なショッピングモールには行ったことがあるけれど、旧軽銀座を訪れるのは初めて。さまざまな店が軒を連ねるメインストリートを、朝比奈さんと見て回る。
「わっ、すごい!」
しばらくすると、東京では目にしたことのないジャムが並ぶ専門店を見つけ、店内に飛び込む。
「朝比奈さん! あれ?」
種類豊富なジャムを前にして興奮気味に振り返ったものの、すぐ近くにいると思っていた彼の姿が見あたらない。
慌てて店の外に出ると、観光客で賑わう通りを進む。けれど、辺りを注意深く見回しても朝比奈さんは見つからなかった。
子供のようにはしゃいだ挙句に、はぐれてしまうなんて情けないと大きなため息をつく。けれど、私はひとりではなにもできない子供ではない。
気持ちを切り替え、朝比奈さんと連絡を取るためにバッグからスマホを取り出す。
「無事か?」
聞き慣れた声に安堵して振り返ると、肩で息をしている彼に手首を掴まれた。
お互いの連絡先を知っているのだからそんなに焦る必要はないし、ほんの少しの間はぐれただけなのに安否を確認するなんて大袈裟すぎる。