エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

そう思ったものの、普段は冷静な彼が取り乱す様子を目のあたりにしたら反論できない。

「ごめんなさい」

険しい表情浮かべる彼に頭を下げる。

「前を歩いていた人の落とし物を拾って渡して振り向いたら、美桜の姿が消えていたから驚いたよ。とにかく無事でよかった」

彼が息を乱しながら事情を説明する。

なにも知らなかったとはいえ、呑気にお店をのぞいていた自分が恥ずかしい。

「本当にごめんなさい」

「いや。油断していた俺も悪かった」

少しも私を責めない彼に申し訳ない気持ちが込み上げてくると同時に、胸がトクトクと音を立てて高鳴り出す。

私は朝比奈さんが好き。

常に救いの手を差し伸べてくれる彼に対する思いを、ハッキリ自覚した。

お見合い相手だと知らずに朝比奈さんと出会ったけれど、私たちは結婚する運命だったのかもしれない。

胸をときめかせて、にこやかに微笑む彼を見つめる。しかしそれも束の間、あることにハッと気づく。

妊娠が勘違いだったとわかった今、結婚話は白紙に戻ったはず。それなのに、運命だと思い込むなんて厚かましいにもほどがある。
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