エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
社長就任の挨拶と私の紹介が無事に終わり、シャンデリアが光り輝く会場で「乾杯」という唱和とともにシャンパンに口をつける。
今日のパーティーは立食ビュッフェスタイル。しかし、のんびりと料理を味わっている暇はない。
「美桜。こっちだ」
「はい」
初めての経験に戸惑ってばかりの私とは違い、龍臣さんは常に堂々としていて社長に就任してからまだ日が浅いとは思えないほど貫禄がある。
頼りがいがある彼を心強く思いながら、招待客の方々に挨拶するために会場を忙しなく回る。すると、彰仁さんと会話を交わしている女性と目が合う。
彰仁さんと彼女がどのような関係なのかわらないまま会釈をしたとき、隣にいた龍臣さんが声をあげた。
「理恵?」
長いマロン色の巻き髪をサイドに流し、紺色のパーティードレスを上品に着こなしている彼女のもとに向かって歩き出した龍臣さんの後を急いで追う。
「龍臣、久しぶり。社長就任と婚約おめでとう」
「ありがとう。理恵が来ると知らされていなかったから驚いたよ」
ふたりが親しげに会話を交わす姿を、半歩下がって見つめる。