エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

いったい、彼女は誰?

お互いの名前をフレンドリーに呼び合う様子をもどかしく思っていると、彼の声が小さくなった。

「元気そうで安心した」

「ええ、元気よ。だからそんな顔しないで」

短い会話だけでは話の内容は理解できない。でも眉尻が下がった彼の顔を見れば、ふたりの間になにかあったのだと容易に予想できる。

私には知り得ない過去の出来事を気にかけていると、龍臣さんが私に向き直る。

「美桜。紹介するよ。彼女は立花(たちばな)理恵さん」

「違うわ。立花は旧姓よ。今は山城(やましろ)。山城理恵よ」

「ああ、そうだったな」

龍臣さんの話に口を挟んで笑う彼女の左薬指には、小さなダイヤを散りばめたマリッジリングが輝いている。

「はじめまして佐伯美桜です」

「はじめまして。ご婚約おめでとうございます」

「ありがとうございます」

ぎこちなく挨拶する私に、彼女が優しく微笑みかけてくれる。

目力がある大きな瞳と、白くて透明感のある肌はとても綺麗で目が離せない。

「今日はシカゴに出張中の父の代理で来たの」

唐突な話に戸惑って言葉に詰まる私に、龍臣さんが説明を加えてくれる。

「理恵の父親は立花商事の社長だ」

「そうでしたか」
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