エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
家柄がよくて美人な彼女に引け目を感じたとき、理恵さんの顔から笑みが消えた。
「美桜さん。龍臣をよろしく頼むわね」
「えっ?」
龍臣さんのことを、身内のように言うのはなぜ?
意味ありげな言葉に対してどのような返事をしたらいいのか頭を悩ませていると、彼女が目を大きく見開く。
「あら? もしかして龍臣からなにも聞いてない? あのね、私たちは幼なじみで……」
「理恵。今日は久しぶりに会えてうれしかったよ。出張中のおじさんにもよろしく伝えてくれ」
ふたりの関係が明らかになろうとしたそのとき、龍臣さんが彼女の話を強引に遮る。その不自然な様子を目のあたりにした瞬間、ふたりは過去に付き合っていたのではないかという疑念が生じる。
理恵さんが元カノだと隠したのは、婚約者の私を気遣ってのことだと自分に言い聞かせてもスッキリしない。
元カノとの再会を龍臣さんがどのように感じているのか気にしながら、彼の横顔を見つめる。けれど穏やかな笑みを浮かべる彼からは、なんの感情も読み取れなかった。