エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
翌日、土曜日の午後六時すぎ。
「お邪魔します」
「どうぞ」
龍臣さんがひとり暮らしをしている青山のマンションの部屋に上がり、彼の案内で長い廊下を進む。
「ここがリビングだ」
「うわぁ、素敵」
モノトーンのインテリアで統一された広々とした室内と、三十八階建ての最上階の窓の外に広がる光景にため息を漏らす。
「それで今日はなにを作ってくれるんだ?」
私が用意した食材が入った袋をキッチンに運び終わり、隣に並んで首をかしげる彼の様子を見て、綺麗な夜景に見惚れている場合じゃないと我に返る。
「カレーです」
「そうか。じゃあ、一緒に作ろう」
「はい」
ふたりで料理をするなんて、まるで新婚みたいだと、浮かれ気分でキッチンに移動して野菜を切り始めた。けれど……。
「危なっかしいな。交代しよう」
「……はい」
彼の不安げな声を聞き、人参を切っていた手を止める。
あまり料理はしなくても、学生時代の調理実習で作ったことのあるカレーなら絶対失敗しないだろうという考えは甘かったと痛感する。
「上手ですね」
「ひとり暮らしが長いからな。ひと通りの家事はできる」
「……そうですか」
私に代わって人参を切り始めた、龍臣さんの手慣れた様子をじっと見つめる。