エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
手料理を振る舞いたくて気合いを入れてきたのに、カレーも海老とブロッコリーのサラダも、龍臣さんがすべてひとりで作ってしまいそうで焦燥感に駆られてしまう。
「やっぱり私にやらせてください」
「そうか? 気をつけるんだぞ」
「はい」
人参を切り終わったタイミングで交代して、彼に負けじと玉ねぎを刻む。しかし、思った以上に玉ねぎが目に染みて手もとが狂う。
「痛っ」
「大丈夫か?」
「……はい。少し切っただけなので」
気をつけるように言われたそばから、指先を切ってしまうなんて情けない。
左手の人差し指に薄っすらと滲む血にショックを受けていると、龍臣さんが傷口にティッシュをあててくれた。
「救急箱を取って来るからダイニングのイスに座って待っていてくれ」
「はい」
言われた通りに隣り合わせになっているダイニングルームに移動すると、彼が戻って来て手あてをしてくれる。
「傷が浅くて安心した」
「迷惑かけてごめんなさい」
「謝らなくていい。痛くないか?」
「大丈夫です」
血はすでに止まったし痛みもさほどない。
こんなことになるなら、少しは家の手伝いをしておけばよかったと後悔した。
「料理もまともにできないなんてあきれたでしょ? こんな私と結婚するなんて不安ですよね?」