エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
昨日のパーティーで見た、理恵さんの優美な姿が頭に浮かぶ。
包丁も満足に使えない私とは違って、既婚者である彼女は手際よく家事をこなすはず。
自分に自信が持てず、彼女に対して劣等感を抱いてしまう。
「美桜に家事を全部押しつけようとは思ってない。時間があるときは俺が料理をするし、デリバリーを利用したり外食してもいい。俺は美桜とふたりで幸せに暮らせたらそれだけで満足だ」
落ち込む私を励ますように、彼が手をキュッと握ってくれる。
結婚したら忙しい龍臣さんに代わって、私がすべての家事をこなさなければいけないと気負っていた。でもそれは間違いで、自分ができる範囲でがんばればいいのだと気づいて心が少しだけ軽くなる。
昨日から胸に燻る思いに蓋をしてしまえば、私たちの間に波風は立たない。けれど今さら、彼女の存在を知らなかったことにはできない。
理恵さんについて、彼からきちんと聞きたいという思いを抑え切れずに意を決して口を開く。
「理恵さんとは……どういう関係だったんですか?」
結婚後の生活について話していたはずなのに、突然話題が変わって驚いたようだ。龍臣さんの黒目が左右に揺れる。
動揺するなんて珍しいと思っていると、彼がゆっくり口を開いた。