クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
その日、午後六時に仕事を終えた後。


「朝一番から強烈だったわね……。一ヵ月分まとめて働いたくらい、疲れた」


一緒に事務所を出た菜々子さんが、言葉通り疲労満載で、げっそりした顔で呟いた。
あの後篠原さんが、堰を切ったように語り出した内容が原因だ。


「はい……衝撃的でした」


彼女が今まで胸に秘め続けた想いと真実に、私もどぎまぎした。
菜々子さんが、「そうね」と相槌を打つ。


「まさか奥さんが、旦那さんを酔わせて襲った時にできた子だなんて」


お腹の底から深い溜め息をつくのを聞きながら、私の心臓はドッドッと騒ぎ出す。
私は結局、篠原さんの相談に最後まで同席することになり、彼女の口を突いて出る奔放なワードに、魂が抜けたみたいに呆けてしまった。


「女性が男性を襲う……そんなこともあるんですね……」


あまりに赤裸々で、今思い出しても赤面してしまう。


「同じ人間だもの。男にある欲望は、女にもある。でも、篠原さんがあまりに旦那さんを辛辣にこき下ろしてたから、想像もしなかったわ……。ダメね。先入観で相談を受けてたら」


菜々子さんはちょっと言い訳っぽく言って、ポリポリとこめかみを掻いた。
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