クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
いつもの帰宅時にはない大きなボストンバッグが、ずっしり重い。
結婚記念日の夜から二日。
奎吾さんは、深夜に仕事に出たきり帰ってこない。
あの日、私が朝から作ったカレーは、食べてもらえないまま傷んでしまった。
最初から最後まで、なにもかも最低な結婚記念日――。
悲しみは頂点を突き抜け、私は未だかつてないほど気分がやさぐれた。
一年間、家を、私自身を顧みてくれなかった彼に、怒りも湧いてきた。
私は今朝、ダイニングテーブルに『しばらく帰りません』という書き置きを残して、家を出てきた。
でも、菜々子さんが言うように、羽目を外して遊びたいわけではない。
奎吾さんの妻という尊厳、自分の存在意義を見直すためにした決断。
だけど、こんなのただの反抗だ。
他人から見れば子供っぽく、衝動的で浅はかだったと思えてくる。
奎吾さんに放って置かれるばかりで寂しくて。
私を認めてほしい、振り向いてほしい……家出紛いの行動をして、彼の気を引きたかっただけかもしれない。
『素直になれずに意地張った顛末』――。
本当はご主人のことが大好きなのに、すれ違いから離婚調停にまで発展してしまった篠原さんに、私は自分を重ねて共感していた。
結婚記念日の夜から二日。
奎吾さんは、深夜に仕事に出たきり帰ってこない。
あの日、私が朝から作ったカレーは、食べてもらえないまま傷んでしまった。
最初から最後まで、なにもかも最低な結婚記念日――。
悲しみは頂点を突き抜け、私は未だかつてないほど気分がやさぐれた。
一年間、家を、私自身を顧みてくれなかった彼に、怒りも湧いてきた。
私は今朝、ダイニングテーブルに『しばらく帰りません』という書き置きを残して、家を出てきた。
でも、菜々子さんが言うように、羽目を外して遊びたいわけではない。
奎吾さんの妻という尊厳、自分の存在意義を見直すためにした決断。
だけど、こんなのただの反抗だ。
他人から見れば子供っぽく、衝動的で浅はかだったと思えてくる。
奎吾さんに放って置かれるばかりで寂しくて。
私を認めてほしい、振り向いてほしい……家出紛いの行動をして、彼の気を引きたかっただけかもしれない。
『素直になれずに意地張った顛末』――。
本当はご主人のことが大好きなのに、すれ違いから離婚調停にまで発展してしまった篠原さんに、私は自分を重ねて共感していた。