クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
私の受け答えそのものはどうでもいいから、間髪入れずに質問を被せてくる。
会話のキャッチボールが成立しない、一問一答形式のやり取りは、一方的で居心地悪い。


「アルバイトは、どういった経緯で? 志願したのですか? それとも、斡旋?」


神田さんが手元の書類から目を上げ、カメレオンの瞳を光らせる。


「母の紹介です。六郎叔父様が、雑用を任せられる事務員を探していらして……」

「どうしてあなたに? 親族と言っても、遠いんでしょう?」


次々と畳みかけられるせいか、威圧感を覚える。
私は肩を縮めて目を泳がせた。


「私は大学で情報処理や統計学の講義を受けていて……」

「なるほど、情報処理に統計学。その知識は、事務所のどういったお仕事に?」

「有権者アンケートの集計や分析です」

「ほう。瀬名さんはパソコンに相当お詳しい?」


遠山さんのキータッチが、速くなった。
狭い室内に、カタカタという音が無機質に響き渡る。


「相当なんて。学生なら普通のレベルです」

「システムとか、プログラミングの技術はおありですか?」

「そういう、専門的なことは……」

「インターネットやメールは普通に使いこなせますよね? パソコンのキャリアメールをスマホで使う設定とか」


神田さんが、急に掘り下げた質問をしてきた。
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