クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
それから十分後、私はダイニングテーブルで歩さんと向かい合った。
テーブルには、歩さんお手製の和朝食が並べられている。
ご飯とわかめの味噌汁、ネギの入っただし巻き卵とほうれん草の白和え。
忙しい朝でも手抜きのない美味しそうなメニューが、私と彼女の二人分――。


「いただきます。さ、食べて食べて、凛花ちゃん」


丁寧に両手を合わせる彼女に、


「あの、純平さんは?」


彼と彼の分の朝ご飯を探して、私はキョロキョロした。


「お仕事行ったよ」

「え。もう?」


歩さんは、お椀を口元に運びながらこくんと頷く。


「いつも朝は早いの。夜早く帰ってくる代わりに。だから、朝ご飯はいつも私一人。凛花ちゃんが来てくれて、一緒に食べられるから嬉しい」


そう言ってはにかんでから、「あ」と口に手を当てる。


「ごめん。嬉しいじゃダメだよね。凛花ちゃんは少しでも早く、奎吾さんのところに帰りたいのに……」

「あ、あの、歩さん」


私は、ビシッと背筋を伸ばした。


「そのことなんですけど……私を預かること、純平さんからなんて聞いてますか?」

「え?」


聞き返されて、膝の上で握りしめた両手に目を落とす。
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