クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
胸に打ち寄せてきた色々な思いが、私の声をのみ込んだ。
黙って私の話に耳を傾けていた歩さんが、静かに箸をテーブルに置いた。


「キャリアかあ……さすが従兄弟同士。そういうところは、純平さんと一緒だ」


どこかしみじみと言うのを聞いて、私は目線を上げた。


「瀬名一族って、なんなんだろう。純平さんは、本家の次男なら当然って目で見られるのを嫌って、実力で上り詰めることにこだわってた。私にはよくわからない、男の意地みたいなものって思ってたけど、奎吾さんまで」


歩さんは、最後は独り言みたいに呟き、「はあ」と溜め息をつく。


「きっと、私たちには理解できない、それぞれの立場での確執とかあるんだろうね。昔から競争ばかりで、歪み合って育ったって聞いたし」


自分で言うのに納得して、うんうんと頷く。
私はこくりと喉を鳴らし、そこまで出かかっていた嗚咽を飲み込んだ。


「……私が初めて奎吾さんと出会ったのは、お二人がまだ中学生で、剣道の稽古をしている時でした。周りの男の子たちのチャンバラごっことは比べものにならない迫力で、五歳だった私は怖がっちゃって……」
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