クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
その頃を思い出すと、懐かしい思いが胸いっぱいに広がる。
グスッと鼻を鳴らす私に、歩さんが「わあ」と感嘆の声を漏らした。


「凛花ちゃん、二人が中学生の時から知ってるの? そっか、純平さん剣道やってたんだ」


唇に人差し指を当て、宙を見上げて「いいなあ、見てみたいなあ」とおどけてうそぶく。
明るい彼女に救われた気分で、私はぎこちなく笑った。
歩さんも、小気味よく首を傾げる。


「昔から常に同じ競争世界に身を置く、ライバル同士だったんだよね。純平さんが言ってた。凛花ちゃんを預かること、『俺に絶対借りを作らないアイツに、頭を下げて頼まれたら断れない』って」

「っ、え?」


意外な言葉に、私は思わず目を見開いた。


「で、でも。奎吾さんは、純平さんから申し出てくれたって」

「え? 違うよ。純平さんは、そんな気遣いする人じゃないしー」


聞いた話と違って困惑する私に、歩さんはひょいと肩を竦めてクスッと笑う。


「普段は、火花散らし合ってるんだろうね。そんな相手に頭を下げてでも守りたい。奎吾さんにとって、凛花ちゃんはそういう大事な人なんだよ。だから、迷惑かけるとか遠慮しちゃダメ」

「……っ」
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