クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
優しい微笑みで諭され、急に鼻の奥の方がツンとした。
一気に目頭が熱くなって、涙腺が崩壊する。


「ふ、うう……っ……」


私は箸をテーブルに戻して、両手で顔を覆って声を殺した。
涙が堰を切ったように溢れ出て、止まらない。
カタッと音がして、私の頭になにかがのせられた。
そっと顔を上げると、歩さんが立ち上がっていて、テーブルの向こうから私の頭を撫でてくれている。


「あゆ……」


呼びかけようとして、喉がひくっと鳴る。
涙で濡れた瞳の真ん中でぼやける彼女が、笑いかけているのが辛うじてわかった。


「凛花ちゃん、今はどっぷり甘えちゃえ。奎吾さんは、純平さんの次に有能な警察官なんだから!」


悪戯っぽく微笑み、二の腕に力瘤を作る仕草を見せる。


「は、ははっ……」


私は途切れ途切れの笑い声を漏らし、ズッと洟を啜った。
歩さんが差し出してくれたハンカチを借り、涙で見苦しい顔に当て、はーっ……と大きく息を吐く。
そして、まっすぐ彼女を見上げ、


「一番有能なのも、頼れるのも、奎吾さんです」


ちょっとはにかんで、一点だけ誤りを正した。
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