クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「あれ? 凛花ちゃん。お休みじゃなかったの?」


私がいつも通り、午前八時四十分に法律事務所に出勤すると、菜々子さんが驚いた顔で訊ねてきた。


「体調不良で一週間ほどお休みするって、さっき所長が」

「あー……はい。でも、大丈夫なので……」


向かい側のデスクに荷物を置いてぎこちなく笑う私に、不思議そうに首を傾げる。
所長に電話を入れたのは奎吾さんだ。
私も、仕事はしばらく休むように言われている。


一週間――。
奎吾さんは、私が無関係だと証明するのに必要な期間を、所長にもそう告げていた。
私には焦れるくらい長いようでも、彼が指揮する事件としては異例とも言える短い時間。
昨夜の純平さんの口振りからも、どれほど難しいか察しはつく。


迷惑をかけているのは私なんだから、私もできることをしないと。
そう考えた時、事件、法律、裁判にも精通しているプロが集まる法律事務所という職場が、とても心強かった。


そう――私は心のどこかで、彼らの力に頼っていた。
そんな甘えた期待をした自分がどれほど浅はかだったか、今私は、身をもって痛感している。
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