クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「は……」


私が大きく目を見開くと、先生方は所長に同意するように、何度も頷く。


「大丈夫。これは被疑者や被告の弁護相談じゃないから、事件の詳細を語る必要はない。君が今どういう状況に置かれていて、どんな風に困っているか、それだけ話してくれればいい」


東雲先生の真摯な言葉に、心が揺れる。
私は恐る恐る所長に目を向けた。
視線に気付いた所長が、目を細めて微笑んでくれる。


「ご主人の迷惑にも、ならないと思いますよ? あなたは困って、職場の弁護士たちと『雑談』した。それだけのことです」


諭すように言われて、私は無意識にごくりと唾を飲んだ。
遠慮がちに私を振り返っていた菜々子さんが、力強く二の腕に力瘤を作る。


「もちろん私も、パラリーガルとして力を尽くすわよ?」

「っ……」


今朝決壊したばかりの私の涙腺が、今もまた緩んだ。


「はっ……はいっ」


上擦った返事が喉に詰まり、ズッと洟を啜る。


「ありがとうございます……どうかお願い、お願いします……」


私は固く目を瞑って涙が零れるのを堪え、腰を直角に折って頭を下げた。
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