クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「仲良くやりましょうよ、捜査二課管理官殿」


拓哉さんはやれやれとばかりに溜め息をついたものの、慣れっこといった様子でひょいと肩を動かす。
警視庁捜査一課と二課が犬猿の仲とはよく聞く話だけど、巷の噂じゃなく真実なのか――。
私には警察あるある的な二人のやり取りも、長老には馴染みの光景なのか、面白そうに引き笑いを続けている。


拓哉さんが暇を告げて離れていくと、私と奎吾さんは車椅子の長老を挟んで二人きりになった。
彼の視線が、頭のてっぺんから足の爪先まで落ちるのを感じる。
もしかして、七五三みたいなんて思われたかな……。
私は居心地悪くて逃げ腰になったけれど。


「奎吾さん、お疲れ様です。お仕事の途中ですよね?」


思い切ってにっこり笑って労うと、「ああ」と短い相槌が返ってきた。


「俺も純平と一緒に切り上げる。凛花、悪いが……」

「大丈夫です。ご親族方への挨拶と、お開き後のお手伝いはお任せください」


スーツの袖を摘まんで高級腕時計を覗かせ、時間を気にする仕草を横目に、私は心得顔で言葉を挟んだ。
先手を打たれた形の奎吾さんが、やや意表をつかれたような顔をする。
そして。


「デキた妻で助かる。凛花、頼んだ」


今までほぼ真一文字で動かなかった眉尻を下げて、私の頭にポンと手をのせた。
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