クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
警視庁捜査二課の執務室に戻ると、早朝にもかかわらず、部下たちは忙しく働いていた。
こんな時に、俺は――。
純平の家を出る直前のことを思い出すと、バツが悪い。


伏し目がちに「おはよう」と挨拶をして、デスクに着いた。
勢いよくドスッと椅子に座り、大きく背を仰け反らせて天井を仰ぐ。
口をすぼめて息を吐き、気持ちを切り替えてから、ノートパソコンを開いた。


パソコンの起動を待ちながら、昨夜の捜査会議で、神田が息巻いて報告した SNSをまだ確認していなかったことを思い出した。
上着のポケットから業務用のスマホを取り出し、SNSアプリでユーザーを検索してみる。


『RINKA.F』……確かにある。
鍵がかかっていて、プロフィールすらわからないが、当然ながら、これが凛花のアカウントのはずがない。
ちょうどパソコンが起動したので、俺はスマホをデスクに伏せて置き、マウスを操作した。


モニターに展開したのは、アーロン・リーによると見られる通信のデータベースだ。
対日本のデータを抜粋してある。
昨日の夕刻、張刑事からメールで提供されたもので、部下たちにも共有している。
神田の報告は、このデータに基づくものだ。
俺は顎を撫でながら、モニターに身を乗り出した。
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