クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
俺は彼にスマホを返し、背を屈めてノートパソコンの通信データを睨むように見つめた。
そして、厳しく顔を歪め……。


「……古谷。ケイマンの口座。インターネット経由の開設だったな」

「はい」


古谷が、スッと背筋を伸ばした。


「タックスヘイブンのケイマン諸島の銀行では、各国の法人がペーパーカンパニーを設立して、合法的節税目的で口座を保有しています。オンライン手続きで、比較的手軽に開設できるのもメリットです」

「銀行に提出された口座開設依頼書には、藤崎六郎の電子サインがされていた。それで、捜査線上に藤崎六郎が浮上したわけだが」


俺は一度言葉を切って、古谷に視線を戻した。


「パソコンに詳しい所員がいないのに、よく電子サインを導入したと思わないか? 登録から使用方法に至るまで、知識がある人間にそそのかされたとしか思えない」

「! 確かに……」

「古谷。至急、全捜査員を会議室に集めろ。これまでの捜査資料をすべて持参するように」


ハッと目を瞠る彼に、早口で命じる。


「はっ!!」


古谷は、先ほどよりもキビキビと敬礼すると、弾かれたように身を翻した。


「全員会議室に集合!! 管理官の御召集です!!」


半ば怒鳴るようにして、周りの捜査員たちに触れ回りながら、執務室から走り出ていった。
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