クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「時任和人の自宅を家宅捜索させてださい! 必ず証拠を挙げて見せます」


力んで発言する彼に、俺は頷いて応じる。


「令状取得を許可する。神田、お前が取得手続きを。いいな?」


古谷の斜め後ろに座っていた神田に視線を流すと、彼は弾かれたように腰を上げた。


「はいっ」


力強い返事に、俺の口角もほんの少し緩む。


「頼んだ。一班、同行しろ」

「はっ!」


俺の命令を聞いて、二人と一班の班員が会議室から我先にと駆け出していく。


「っ……管理官、自分も家宅捜索に行かせてください!」


ざわつく部下たちの中ほどで、遠山が居ても立ってもいられないといった様子で挙手した。
俺は足を引いて彼に向き直り……。


「お前は残れ。時任名義の預金口座を保有する銀行と、ネット証券会社を当たれ」

「っ……」


腕組みをして、靴の踵をコツコツと鳴らして彼の前まで歩いていく。
足を揃えて立ち止まると、わずかに眉尻を下げた。


「困ったことに、昨日俺の妻が、藤崎六郎事務所に連絡をしている」

「え?」

「妻は事件の真の概要すら聞かされていなかったから、他の所員だったら、意味不明な連絡だったかもしれない。しかし今、事務員は時任に替わっていた」


遠山が俺を見上げて、喉仏を上下させる。
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