クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
『っ……すまない、凛花』


奎吾さんは私と目が合った途端、見たことがないくらい慌てふためき、開口一番で謝った。
勢いよく顔を背け、私を視界に入れることなく、部屋から出て行ってしまった。
突然の行動よりも、どうして謝るのか、奎吾さんの心がわからない。


嬉しいのに。
奎吾さんのキスで、目覚めるなんて。
朝からドキドキ夢見心地で、私は気付くとそのことばかり考えてしまっている。


どうして? どうして――?
教えてほしい、知りたいと思う気持ちを、ちゃんと言葉にして伝えなきゃ。
一刻も早く奎吾さんのマンションに帰りたくて、気持ちばかりが逸り、焦燥感さえ湧いてくる。
頬の火照りと速い心拍も治まらない。


少し気を紛らわせようと、私はジャケットのポケットに手を突っ込んだ。
昨日、先生たちからのアドバイスもあり、私はほぼ二年ぶりに六郎叔父様の事務所に電話をした。
和人君が出てびっくりしたけど、そう言えば私がバイトしていた頃も時々事務所を訪ねて来ていた。
応援やお仕事を手伝いに来るのではなく、お小遣いをもらいに来る感じ。
でも、叔父様は彼に甘かった。
『二十歳にもなって困った甥だ』と零しながらも、彼が顔を出すと嬉しそうだった。


和人君がいてくれてよかった。
私よりよっぽどパソコンに詳しいし、私と同じ業務を担当しているなら、仕事でも重宝されているはずだ。
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