クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
その和人君が、データに残してはいないけど、システムログが取れるかもしれないから、試してみると言ってくれた。
貸与メールの管理方法も確認すると。


その情報を待って、仕事中はいつもバッグにしまってあるスマホを、今はポケットに入れている。
だけど、今のところ連絡はない。
昨日の今日で、そんな都合よく見つかるわけがないのに焦りすぎだと、自分を窘めた。
とその時、事務室の電話が鳴った。


「はい。お電話ありがとうございます」


私がハッとするより早く、菜々子さんが受話器を持ち上げていた。
事務員の私の方が、反応が遅れてしまった……。
テキパキと応対する声を聞きながら、私は不甲斐ない思いで身を縮こませた。


ダメだな、私。
しっかりしなきゃ。
私は自分を叱咤して、なんとか頭を切り替えた。


「凛花ちゃん。三十分後にお客様来るから、相談の準備して」


電話を終えた菜々子さんが、受話器を置きながら声をかけてくる。


「はいっ」


私は、今度こそ!と気を引き締めた。


「初めての方ですか?」


菜々子さんが、「そう」と返事をしてくれた。
この事務所では、彼女が初めて訪れる人の相談窓口をしている。
忙しい先生たちの手を煩わせないのと、パラリーガルの勉強というのは建前で、以前菜々子さんが『要は人手不足なのよ』と言っていた。
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