クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「応接室でいいですよね?」


私は名誉挽回とばかり、早速準備をしようと席を立ち、


「っ」


ポケットでスマホが振動するのを感じて、とっさに手を遣った。


「凛花ちゃん?」


一瞬強張った私の気配に気付いたのか、菜々子さんが顔を上げる。


「い、いえ。行ってきます」


私は首を横に振って応え、そそくさと事務室を出た。
応接室に入ると、ポケットからスマホを取り出す。
スマホの振動は、メールの着信通知だった。
私は、縋る思いでメールを開き――。


『凛花ちゃん。昨日の話の件で、参考になりそうなものが見つかった。これからそっちに行くから、一緒に確認してほしい』

「っ、え?」


本文に目を通し、思わず声をあげた。
とっさにモニターの時計表示に目の焦点を合わせ、時間を確認する。


もうすぐ、正午。
先生たちは案件の裏取り調査に朝から直行していて、菜々子さんはこれから来客対応。
所長もランチ会合の予定があり、もう間もなく外出してしまう。


和人君がなにを見つけたかわからないけど、私一人で見てわかるだろうか?
逡巡したのは、ほんの一瞬。
――奎吾さんは、まず俺に連絡しろと言ってくれた。


私は、奎吾さんの電話番号をモニターに映し出した。
一度ゴクッと唾を飲み、意を決して発信ボタンをタップした。
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