クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
その日の夜、午後十一時過ぎに奎吾さんが帰ってきた時、私はすでに就寝支度を済ませていた。


「お帰りなさい」


玄関先まで出迎えると、奎吾さんが靴を脱ぎながら目線を上げた。


「ただいま」

「お疲れ様でした」

「ああ。お前も」


自分の方こそ、ほんの十五分ほど長老のお祝い会に出席しただけで、朝からずっと仕事に追われていたのに、私を労ってくれる。


「いえ、私は全然……」

「祖父さん、お前が気に入りだから。いい祝いになったろうが、付き添いも疲れただろ?」


私の頭をポンと叩き、横を摺り抜けてリビングに向かう。
私は一瞬その背を見送りかけてから、黙って後を追った。
彼に続いて室内に入ると、開放感あるリビングが視界に拓けた。


向こう側の壁は、一面大きなガラス張りになっている。
タワーマンションの二十五階という高層階で、外からの視線を気にする必要がなく、月明りを遮断するカーテンやブラインドはない。
薄いレースカーテンも閉じていないから、東京都心の夜景を贅沢に一望できる。
その広々とした空間に、アイボリーで統一された高級な家具が点在している。
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