クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
***


昼近くになって、国枝部長が登庁した。
方々から届く捜査の進捗状況に対応しつつ、昨夜の会議から今朝までの捜査方針の報告のため、やきもきしながら彼を待っていた俺は、早速部長室を訪ねた。


「午前十時に令状を取得。神田と古谷、一班全員が、同居の母親立ち会いのもと、時任の自宅の家宅捜索を開始したところです。遠山には銀行とネット証券会社への捜査を指示しました。二班が藤崎六郎事務所周辺、三班が藤崎凛花の勤務先に張り込んでいます」


国枝部長は、執務机に並べた膨大な資料に目を落とし、俺の報告に耳を傾けていた。
机の前に直立し、報告を終えた俺に、厳しい顔で目線を上げる。


「万事承知した。それで、時任和人は、今どこに?」

「事務所には出勤していません。母親の話では、昨夜も帰宅していないそうです。家宅捜索班から連絡がありました。外泊はよくあるようで、特に心配もしていなかったと」

「まあ、二十二歳の男だからな」


部長は、時任の不在にそれほど興味なさそうに、相槌を挟んだ。


「時任の捜索は?」

「四班が対応しています」


俺の即答には、何度か首を縦に振って納得を示す。
< 170 / 213 >

この作品をシェア

pagetop