クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
こうして眺めると、宇宙空間のようで幻想的だ。


奎吾さんはソファの前まで行って、小さな吐息とともにネクタイを緩めた。
私も彼の後ろで足を止め、上目遣いで窺う。
見上げる背中は、より広く逞しくなった。
落ち着いた居佇まいは頼もしく、そこから得られる安心感は、今も昔も全然変わらない――。


初めて奎吾さんと会った時、私は五歳、彼は十五歳だった。
瀬名本家で現当主の警視総監就任祝いがあって、私が父と母に連れていかれた時だ。


会場は大人ばかりで、私は父と母にくっついているのも飽きてしまい、広い庭に出て一人で遊び始めた。
それがそのうち探検に変わって、庭の奥へ奥へと突き進み、やがて古い平屋の建物の前に迷い着いた。
いや、その中から聞こえた、パーンパーンという竹を割るような乾いた音に、導かれたのかもしれない。


平屋の入口は開いていたので、中に入ってみた。
すると、畳敷の部屋で、道着と面をつけた人が二人向かい合い、長い棒を振るっていた。
外で聞くより激しい音と二人が発する鋭い声、鬼気迫った速い動きに怯み、私はその場で固まってしまった。
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