クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「お前のせいじゃない、俺のせいだ。それでもお前に怪我をさせずに済んだから、俺はほんの少し自分を許した」


ひくっと喉を鳴らして声をのむ私に、奎吾さんが優しく微笑む。


「……だから、泣かないでくれ」


男の人にしては長く細い綺麗な指が、私の目尻の涙を掬った。
私の頬を両手で挟んで、覗き込んでくる。
そして、ふっと口元を歪めて――。


「心臓が止まるかと思った……」


一転して苦しげに声を絞り、私をギュッと抱きしめた。
途端に、私の胸がドキッと跳ねた。
だけどすぐ、頬をくすぐる白い包帯と消毒液の匂いで我に返る。


「や。ダメ、ダメです、奎吾さん」


私は、逞しい腕から抜け出そうともがいた。
なのに、腕の力は緩むどころか、ますます強まり……。


「っ、奎吾さん、傷が開いちゃ……」

「凛花。頼むから、嫌がらないで」


彼の唇が、私の耳朶を直接掠める。
鼓膜に刻みつけられた、まるで乞うような囁きに、身体がビクッと強張った。


「こんな目に遭わせて、もう俺の顔なんか見たくもないだろう。だが、もう二度とこんな怖い思いはさせない。だから、嫌わないでくれ……」


切なげに消え入る声に、胸がきゅうっと締めつけられる。
だけど――。
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