クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「ど……どうして」


私は抗うのをやめ、彼の胸元から顔を上げた。


「奎吾さん、どうして。私の方がよっぽど、奎吾さんにそう言いたいのに」

「え?」

「嫌がらないで、嫌わないで。もう絶対、こんな迷惑かけないから。奎吾さんのキャリアの邪魔にならないよう、しっかりしたいい妻になるから」

「凛花?」

「私はずっと、そう思ってきました。だから、奎吾さんがそう言うのはわからない」


心の内に秘め続けた想いを吐露するうちに、感情が強く揺さぶられた。
私は、ズッと洟を啜って……。


「どうして私を大切にしてくれるの。どうして、どうして……寝てる時にキスなんか」

「愛してるから」


淡々と短いけれど、熱情的な言葉が降ってきて、声が喉に詰まった。


「愛してる、凛花。俺が他のなにをおいても欲しがった女。どんな姑息な手を使っても、手に入れたかった妻。お前は、俺にとってそういう人だ」


彼がなにを言ってるかちゃんと聞こえるのに、その意味が理解できない。
奎吾さんは、呆然とする私に困った様子で、口元を覆い隠した。


「寝ている時なら、嫌がられない。そんな安心感から、俺は夜這い紛いなことを何度も……」

「ど、どうして」


私は彼の胸に置いた手をギュッと握りしめ、一歩踏み込んだ。
< 186 / 213 >

この作品をシェア

pagetop