クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「……すまなかった」

「そうじゃなくて。あ、愛してるって……?」


奎吾さんが顎を引いて私を見下ろす。


「だって奎吾さん、今までそんな素振り少しも……」

「お前、俺との結婚は不本意だっただろう?」

「……え?」


問われた意味が、さらに輪をかけてわからない。


「プロポーズした時、俺が本家の梗平さんじゃなくて、がっかりしたじゃないか」


奎吾さんは自嘲気味に顔を歪め、腕を解いた。
そして、私から目を逸らし……。


「分家筋で不服だったのか、それとも怖い『お役人さん』じゃなく裁判官の梗平さんがよかったのか。とにかく、それで俺は……」

「なんで。なんでそんな……」

「え?」


私の頭の中は真っ白になり、全身の力が抜けて、その場にへなへなとしゃがみ込んでしまった。


「あ、おい」


奎吾さんが背を屈めかけて、「う」と顔をしかめる。


「! 奎吾さ……」

「大丈夫。心配するな。立てるか?」


手を差し伸べてくれる彼の黒い瞳をまっすぐ見つめて、


「ずっと、好きでした」


私は、思い切って告げた。


「……は?」


奎吾さんは中途半端な体勢で固まって、目を丸くする。


「初めて会った五歳の時から、あなたに憧れてました。奎吾さんとお見合いって聞いてもどんな人かわからず、不安だった。でも、奎吾さんだったから驚いて、夢みたいで嬉しくて」
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