クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
太々しく開き直る彼に、開いた口が塞がらない。
だけど、私はすぐ気を取り直した。


「それなら、どうして」

「また『どうして』か。お前、今日はそればかりだな」

「初夜もこの間も、と、途中で……」

「え?」


首を傾げて聞き返され、口走ろうとした言葉をのみ込む。
カッと頬を茹だらせる私に、奎吾さんは訝しげに眉をひそめ、


「ああ」


私が言わんとしたことに思い当たったのか、口元に手を遣って相槌を打つ。


「初夜は……やはり嫌がられてると思った」


そう言って、膝の上の手に目を落とした。


「この間は、お前が初めてだと知ったから。俺はバカな嫉妬に駆られて、尋常じゃないほど興奮していたし、お前を苦しめると思った」

「苦しめる……?」

「……男が興奮するとどうなるか、見たこともないだろ?」


斜めに見上げる視線に、私の心臓がドキッと跳ね上がる。


「え、えっと……」


心の中まで探られる感覚が居心地悪くて、目を彷徨わせながら言い淀むと。


「……凛花」


奎吾さんが、ソファを軋ませて立ち上がった。
私の肩に手をのせ、ほっそりとした顎を傾けて顔を寄せてくる。
先ほどの優しいキスとは違い、一気に踏み込まれ、


「ん、んっ、ふぁ……」


鼻から抜けるような声が漏れた。
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