クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
***


時任の逮捕から三日。
捜査二課では連日、神田を中心に、刑事たちが全力で聴取を行なっている。
午後四時。
俺は国枝部長への報告を終えると、その足で休憩室に向かった。


「お疲れ、奎吾」


一歩踏み入れるが早いか、テーブルに着いていた先客から労いの声をかけられ、反射的に足を止める。


「純平。悪かったな、忙しいところ」

「ああ」


純平の隣の椅子に、凛花のボストンバッグが置いてある。
それをテーブルに移動させる彼に近付いていった。


「ほら」

「サンキュ」


彼と同じテーブルの椅子を引き、腰を下ろす。
その途端、純平がなにかを勢いよくテーブルに滑らせた。
俺は、とっさに片手で受け止め――。


「お前は、いつもこう前触れもなく……」

「被疑者逮捕祝いだ。大人しく飲め」


相変わらず、人の話を聞かない男だ。
俺は顔をしかめたものの。


「コーヒーか。……いただく」


純平も同じ缶を持っていた。
俺に相槌を打って、カシッと音を立ててプルトップを引く。
早速口に運ぶ彼の前で、俺はやや改まって背筋を伸ばした。


「純平。凛花の件で礼がしたい。今度日を改めて……」

「一週間どころか、たったの二日で凛花さんの無実を証明し、事件もスピード解明。さすが捜査二課管理官殿と、俺はそれなりに敬意を表している。それでチャラにしてやるよ」
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