クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
『本邸でやってる親父の警視総監就任祝いの、招待客の子じゃないか?』


後から近付いて来たのが純平さんだと知ったのは、それからしばらく経ってからのこと。


『だったら、親が捜してるかもしれない。本家の敷地で迷い子騒ぎにでもなったら、笑えないだろ。連れて戻ろう』


そう言って私の手を引き、多くの人が集う洋館に連れ戻ってくれたのが奎吾さんだったのだけど――。
純平さんが警視総監を『親父』と言ったから、私はこの二人こそが瀬名本家のご兄弟で、奎吾さんのことを梗平さんと思い込んでいた。
それが誤りだったと知ったのは、なんと、奎吾さんとお見合いしたその時のこと……。


「凛花。俺はシャワーを浴びて寝るから、お前も早く休め」

「っ、え?」


幼い頃の淡い記憶に思いを馳せていた私は、なにを言われたのかわからず、詰まりながら聞き返した。


「疲れただろ? 早く寝ろ」


私の脳裏に浮かんだ中学生の奎吾さんと同じ、訝しそうな目をした今の奎吾さんが肩越しに振り返る。
変わらない黒い瞳に射貫かれ、私の胸は今もドキッと跳ね上がった。
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