クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「珍しく二人揃って和気藹々かと思いきや……やっぱり物騒な話してますね」


呆れたような笑い声が、背後から近付いてきた。
俺も純平も、ほぼ同時に振り返り……。


「なんだ、朝峰」


純平が軽く応じる。


「お疲れ様です。両管理官殿」


拓哉が笑みを浮かべて、俺たちと同じテーブルにやってきた。
彼が椅子を引いて腰を下ろすのにつられて、俺も座り直した。


「竹刀叩き落とすとか、真っ二つに胴切りとか……剣道の話ですか?」


他意のない、すっ惚けた平和な顔で、俺と純平に交互に視線を向けてくる。
純平が、「ああ」と首を縦に振って応じた。


「それより、次の公判の件で検察から調書の提出求められてるだろ。準備できたのか?」

「はい。瀬名さんのパソコンに送っておきました。後ほどご確認いただけると」

「わかった。先に戻る」


仕事の話題だからか、従兄弟同士のわりに一線置いた口調で会話を終えて立ち上がる。


「よろしくお願いします」


そう声をかける拓哉と共に、俺は休憩室を出ていく背中を、無言で見送って――。


「あ。奎吾さん、事件解明おめでとうございま……」

「そう言えばお前、凛花になにを言った?」


思い出したように話題を振ってくる彼を、頬杖をついてじっとりと見据える。
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