クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「え?」

「純粋な凛花をからかって、馬鹿なこと吹き込んだのお前だろ?」


言い逃れは許さない気持ちで、声にドスを効かせて畳みかけると、拓哉がギクッとしたようにたじろぐ。


「あ。ええと……もしかして、祖父ちゃんの卒寿祝いの後の……?」


怯みながら上目遣いで探る彼に、俺は無表情で頷いて返した。


「いや、それはほら、からかったんじゃなくて。凛花ちゃんがなにかすごい思い詰めた顔してたから、少しでも力になろうと……」


珍しくしどろもどろになって言い訳する彼を、テーブルをドンと叩いて制す。
拓哉は、ビクンと姿勢を正した。
そして、怖々といった顔つきで、俺を覗き込み――。


「もしかして……やられました?」


策士めいた目つきに変わって、遠慮なく窺ってくる。


「っ」


あの時の凛花のしどけない姿体が網膜に浮かび上がり、俺は無自覚に喉仏を上下させた。
答えとして十分な反応になったのか、拓哉は「はーん……」と呟いて目を細める。


「……悩殺されました?」


口元に手を立て、コソッと訊ねてくる彼を、俺はギロッと睨んだ。


「ふざけるな。なにがエロい下着だ。お前の趣味だろうが」


残りのコーヒーをグッと呷り、ガタンと音を立てて椅子から立ち上がる。
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