クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「恐ろしい世界だな。手元のスマホ一つで、二十歳そこそこの学生が世界の犯罪者となんなく交流できるんだから」


テレビの中で女性キャスターがニュース原稿を読み上げるのを聞きながら、東雲先生が厳しい顔をして顎を撫でた。
私の隣で、菜々子さんも硬い表情で頷く。


「そういった便利ツールの光と闇を浮き彫りにした事件ですよね。手軽だけど、知り合った人がどういう人物かはわからない。個人情報も一度漏洩したら、自分の知らないところで簡単に悪用され得る……。私もセキュリティには気をつけよう」


私もきゅっと唇を結び、二人の言葉を肝に銘じた。
和人君が逮捕されてから二週間。
それまでの聴取について、奎吾さんは私にも共有してくれた。


それによると、和人君はいわゆる『闇バイト』に手を染めようと考えるほど、お金に困っていたそうだ。
だけど、実際そんな勇気はなく、自分に甘い六郎叔父様にお金を無心していただけ。


ところが、事務所に来た際、私のパソコンを無断で弄っていて、『他人になりすます』ことを思いついたと言う。
万が一闇バイトへの加担が露呈したとしても、連絡先を偽っておけば自分自身は訴追を免れる――そう考えて、私のアカウント情報を盗み出した。
私のメール情報を使ってSNSで偽アカウントを開設して、闇バイトの情報を検索しているうちに、香港のマフィアグループの一人と偶然繋がった。
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