クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
奎吾さんは、警察庁所属の警視正だ。
一年にほんの数人しか採用されないキャリア組……いわゆる警察官僚で、現在警視庁捜査二課に管理官として出向中。


凶悪犯罪を扱うことで知られる捜査一課と違い、捜査二課は知能犯罪を担当するそうだ。
組織的な詐欺事件や、政界絡みの汚職事件、大企業の横領事件……最新のテクノロジーや知略が緻密に張り巡らされた事件を扱う捜査官には、それを読み解く頭脳と知識が求められる。
それ故、捜査二課は警視庁の中でもエリート集団と呼ばれる。
そんな二課を指揮する管理官……それが奎吾さんだ。


それほどの社会的地位がある彼の妻には、大人っぽくも色気もない私じゃ役不足なのは重々承知している。
世間的には、超エリート旦那様と誰もが羨む極上結婚。
旦那様から『デキた妻』と言ってもらえて、私は親しい友人にも幸せなセレブ妻と思われている。


でも、私たち夫婦の実態は――。
中断した結婚初夜は、流れたまま。
私は夫に指一本触れてもらえず、夫婦生活は一度もないのに、傍からは夫婦円満と思われている。
もうすぐ結婚一周年だけど、完全なる仮面夫婦と化していた。
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