クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
嬉しくて夢みたいで、踊り出したくなるのを必死に堪えた。
舞い上がって有頂天になったあの瞬間が、私の幸せの絶頂だった――。


私はどうして、幸せのスタートで躓いてしまったんだろう。
結婚初夜が中断されたのは、奎吾さんに部下から電話がかかってきたからだ。
でも、それからずっと無期限延期状態なのは、彼の仕事が忙しいせいだけではないはず。


奎吾さんは警察官僚一族の生まれで、自身もキャリア警視正だ。
端整で精悍な顔立ちで、女性は誰もが振り返って二度見するし、海外モデル並みの恵まれたスタイルで圧倒的な存在感を放つ彼に、男性も羨望の眼差しを向ける。


落ち着いていて、大人で知的。
恐らく、女性に困ったこともないだろう。
そんな奎吾さんが、どうして十歳も年下の私にいきなり求婚したか……。
私だって、有頂天のまま、のほほんと一年も過ごしたりしない。


『その上、凛花を娶ったか。これでお前の人生もキャリアも、向かうところ敵なしか』


そんなこと、人に言われなくてもわかりきってる。
それほどの人でも、奎吾さんは分家筋だ。
瀬名一族が警察界でどれほどの権威か、私には想像も難しいけど、能力が拮抗していたら、多分、同期で本家の純平さんを超えることはできないのだろう。


やっぱり、キャリアのため?
私の父が現総務省次官で、政界に名を連ねる政治家や官僚が親族に多いというバックボーンが狙い?
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