クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
人とのコミュニケーションや社会との繋がりを求めた私に、このとてもアットホームな雰囲気は居心地がいい。


瀬名家長老の卒寿祝いが行われた翌々日、週が明けて月曜日。
私はいつものように午前九時に勤務に入り、皆のコーヒーを淹れて、それぞれの部屋に配って回った。
最後に事務室に戻り、パラリーガルの信濃(しなの)菜々子(ななこ)さんのデスクにカップを置いてから、向かい側の自席に腰を下ろす。


私がこの事務所で任された仕事は、受付から事務所の備品管理、先生方の出張費精算など、事務周り全般だ。
元々は菜々子さんが一人で請け負っていた業務で、私に親切に指導してくれた。
アルバイトを含めても短い職歴が少しは役に立つものの、半年経っても完璧にはこなせない。
先週の金曜日にやり残した経費精算の領収書をデスクから取り出し、早速仕事に取りかかろうとすると。


「ねえ。凛花ちゃんって、どうしてそんな若くして結婚したの?」


パソコンの向こう側から問われて、ピタリと手を止めた。


「……え?」


互いの視界を遮るパソコンを避け、横からひょいと顔を出して聞き返す。
菜々子さんも同じようにこちらに顔を覗かせていた。
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